会長挨拶

日本経済会計学会
会長 坂上 学(法政大学)

 2021年4月より日本経済会計学会の会長職を、前任の薄井彰先生より引き継ぎました。日本経済会計学会と名称変更をしてからは第2代なのですが、前身学会である日本経営分析学会から数えますと、第8代会長ということになります。日本経済会計学会へ統合された日本ディスクロージャー研究学会の最後の会長でもありましたので、何か2度目の会長就任のような錯覚を感じたりもしています。

 日本経済会計学会は、2019年6月にその前身である日本経営分析学会(薄井彰会長:当時)がディスクロージャー研究学会(坂上学会長:当時)を吸収合併する形で誕生した生まれたばかりの学会ですが、この原稿をしたためている時点の会員数はほぼ600名と、日本会計研究学会、日本管理会計学会、日本簿記学会に次ぐ会員数を擁する中規模の学会として、その存在感を示しています。ひとえに前身学会である日本経営分析学会とディスクロージャー研究学会が長年にわたって引き継いできた伝統と、それぞれの学会において展開されてきた学問水準の高さに裏打ちされたものであると思います。それゆえ、先人の方々が築き上げた学術的財産を承継する責務を、我々は負っているものと感じております。

 日本経済会計学会として新たな出発をした時より、合併後の最初の会長である薄井彰先生の強力なリーダーシップのもと、会則をはじめとする諸規定の統合をはかり、学問的な水準を維持し発展させるべく、さまざまな改革を成し遂げてきました。この一連の改革を承継し、以下のような学会運営を遂行したいと思っております。

諸規定の更なる見直し

 薄井前会長のもとで諸規定の整備が進められましたが、会員資格、役員選挙規定、顕彰制度などにおいて解釈が微妙な規則も、いくらかではありますが残されています。2つの学会が統合し日本経済会計学会となってから、前年度末にはじめての役員選挙が実施されましたが、そこであぶり出された問題点を整理し、よりよいものとなるよう諸規定の整備を進めたいと思います。

研究活動の更なる充実

 本学会会員の研究活動の水準はとても高いと認識していますが、一方で学会誌への投稿数の減少という相反する状況に悩まされていることも事実です。より多くの投稿を促すためには、査読プロセスを含めた学会誌改革の必要性を感じています。多くの会員が投稿をしたいと思うにはどうしたらよいか、各誌の編集委員長とも協力して、改革をおこなっていきたいと思います。

 また賛助会員のデータベンダー企業が提供するデータセットとプロジェクト研究とをタイアップさせるなど、魅力ある研究助成制度を実現できればと思っています。

ソサイエティ制度の安定的な運営

 本学会は、会計学系ではおそらく初めて、アンブレラ方式を採用した学会となりました。アメリカ会計学会では、さまざまなセクション(本学会におけるソサイエティ)が設けられ、それぞれにセクション・ジャーナルを発行し、カンファレンスを開催するなど、ある程度の独自性を認めながら運営がなされていますが、これに倣い、学会運営において最も多くの負担が強いられる会員管理と会費徴収というオーバーヘッドを共有化できたことのメリットを十分に生かせるよう、ソサイエティ制度の安定的な運営を目指します。

英文誌Accounting Lettersの発行

 薄井前会長のもとで準備を進めてきたAccounting Lettersですが、諸事情により2020年度中には発行されませんでした。2021年度中には必ず創刊号を発行させたいと思います。また、ゆくゆくは外国の研究者にも注目される雑誌へと育てていきたいとも思っております。

中長期的課題への対応

 以上の具体的な目標のほかに、中長期的で大きな目標としましては、法人化に向けた調査・議論を始めるということを挙げたいと思います。現在の日本経済会計学会は、法人格をもたない任意団体ということになります。任意団体であるということは、団体名義での契約等ができませんので、銀行口座や郵便振替口座などの開設ができません。日本経済会計学会として生まれ変わってから、1年半が過ぎようとしていますが、いまだに学会の銀行口座は前身学会である日本経営分析学会のままとなっていることは、任意団体であることのデメリットを端的に表しているといえます。表向きは団体名となっていても、背後では個人名での契約になっていますので、学会の保有する預金等の資産が、実質的に個人の資産として管理されていることにもなり、ガバナンス上も大きな問題を抱えています。
 学会が法人格を持つ、具体的には非営利型一般社団法人へと移行することで得られるメリットとしては、団体として契約ができることになりますので、法人名義の口座を開設することができることになります。会費徴収でクレジットカード決済などの仕組みも導入できるかもしれません。会費収入や寄付金収入についても法人税の課税対象外として扱われるので、しかしながら法人化にはそれ相応の義務も発生しますし、非営利型一般社団法人の場合は収益事業をしなければ基本的に課税はされないのですが、セミナー等を開催し参加費を徴収した場合、それが収益事業と見なされ課税対象となる可能性もあります。また本部を東京都に置くのであれば、法人都民税として毎年7万円を納入する必要もでてきます。

 法人化のための最初のステップは、定款の改訂になります。そこでまず問題となるのは、社団法人の社員をどのように規定するかです。現時点で、本学会はその規模に比して理事が多いのが特徴となっていますが、これは将来の法人化を見据えたうえでの措置であることをお含み置きいただければと思います。つまり現在の理事を代議員として読み替え、その代議員を法人の社員とすることによって、従来の理事会が社員総会として位置付けられることになります。これにより法人運営のスムーズな移行が可能となるわけですが、これらの諸問題を検討する委員会の立ち上げも含め、学会の法人化という中長期的な課題にも対応していきたいと考えております。

 これからの3年間という任期中に、会員の皆さまに少しでもお役に立てるよう頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします。

2021年12月