会長挨拶

日本経済会計学会
会長 奥村 雅史

 2024年度より日本経済会計学会(AEAJ)の会長を拝命いたしました。日頃よりAEAJの会員の皆様による多様な調査研究から、一会員として、大きな知的刺激を受けております。今後も、皆様の積極的な研究活動が行われ、会員相互の多様な交流が実現する場としてAEAJが発展できるように微力ながら尽力いたします。

 2019年に日本経営分析学会と日本ディスクロージャー研究学会の統合により日本経済会計学会に名称変更して6年が経過しました。前身学会はそれぞれ、日本経営分析学会が1984年に発足し、日本ディスクロージャー研究学会が2010年に2つの学会(2001年発足の経営ディスクロージャー研究学会と1999年発足のディスクロージャー研究学会)を統合して発足しましたので、前身学会を含めると、40年にわたって研究活動が継続してきたことになります。AEAJは前身学会の人的・学術的資産を多く引き継ぎながら発展してきた学会であり、このような経緯から会計学、経営学、経済学及びその他関連分野を広くカバーした研究が行われてきています。

 AEAJは、 年 次 大 会、 秋 季 大 会、Workshop及び経営分析セミナーの開催、3つの機関誌(2つの和文誌と1つの英文誌)及び会報の発行、各種の学術賞の授与、学会Webサイトでの情報発信などを主要な活動として運営してきました。ここ数年は、コロナ禍によって大会やワークショップなどの開催は大きな制約を受けましたが、昨年度後半からは対面による開催が可能になり、今後は再び学会活動を活発化させることができる状況となっています。

 近年では、各学問分野、各領域に特化した研究だけでなく、学際的アプローチによる研究や複合的領域における研究が益々必要となってきており、かつ、従来以上にその重要性が高まっています。そのような中、当学会のミッションの達成には、最先端の研究の展開、多様な専門性を有する研究者間の交流促進、次世代の研究者養成への一層の配慮が肝要であり、これを首尾よく達成するための学会運営が求められるところであり、以前にもまして、学会活動への皆様のご協力と積極的な参加をお願い申し上げます。

 坂上前会長は、取り組むべき事項として、(1)諸規定のさらなる見直し、(2)研究活動のさらなる充実、(3)ソサイエティ制度の安定的な運営、(4)英文ジャーナルAccounting Lettersの発行の4項目をあげておられました。これらはいずれも着実に進められてきており、今後の学会運営においても重要な指針であり、その方向性を今期においても継承していきます。これらに関わらせて、以下の事項について進める必要があると考えております。

オンライン活動の再検討

 新型コロナ感染拡大を契機にオンラインの活動が社会的に拡大しました。本学会の大会もオンラインで行わざるを得ない状況になりましたが、そこでは参加者の増加というプラスの効果も確認されました。現在、当学会の活動は完全対面に戻されていますが、オンラインの活動を一部維持することにも意義があるのではないかと考えています。とくに、所属機関等での業務が多忙な場合や研究旅費を確保するのが難しい場合などにはオンラインでの大会等の開催が会員サービスの向上につながると思います。この点に関しては、そもそも、オンラインでの開催可否、開催可の場合にはその頻度など、慎重に検討する必要があります。

これに加えて、学会Webサイト内のオンライン・コンテンツの充実も検討します。とくに、新しいトピックや分析技法を解説するようなコンテンツは、若手研究者の研究力向上にとって有効であることはもとより、中堅以上の研究者にとって日進月歩の分析技法の現状をフォローするために活用すべきものであると思います。

学会運営の効率化

 学会運営の効率化を図ることは、会員の自発的活動で支えられている学会を安定的に運営するために非常に重要です。これまでも、SMOOSY(会員管理システム)による会員管理および会費関係事務の効率化、外部組織を利用した大会Webサイトの設定や参加費徴収による大会開催業務の効率化が進められてきました。これらはいずれも会員の便宜の改善と運営の効率向上を図るものです。その他の業務においても標準化・定型化を進めることによって、運営業務の負担を軽減することで学会の運営体制はより盤石なものとなると思います。なお、前会長が指摘されていた学会の法人化についても、学会運営の観点からその意義を確認したうえでその道筋について検討する予定です。

英文機関誌の順調な刊行

 本年3月に機関誌のひとつであるAccounting Lettersの創刊号(初代編集委員長:薄井彰先生)が発行されました。今後は、今期より編集委員長に就任される予定の太田康広先生のもとで、Letterジャーナルの特性である速報性を生かしながら順調に発行され、成長を遂げていくことが期待されます。この機関誌が内外の研究者に知られ、掲載論文が広く引用されるようになるために、編集委員会を中心にその在り方を検討していただきながら、あるべき方向性を追求します。

学会組織の再検討

 当学会の適切な組織体制について検討します。当学会は合併後、2つのソサイエティと2つの部会を有する複雑な組織になっています。日本経済会計学会が発足してからすでに6年が経過しており、組織体制の在り方について検討すべき時期が来ています。とくに、前会長が指摘されているように、2つの部会についてはその役割を再検討する必要があると考えています。

日本会計研究学会大会への参画

 本年度の第41回年次大会は、日本会計研究学会第83回大会の中の企画であるAccounting Weekにおいて開催されます。そこでは、非会員の方も当学会の年次大会に参加可能なので、AEAJの魅力を非会員にアピールできる絶好の機会になります。会員の年齢構成からの必然として、現在は会員数が減少傾向にありますが、この機を利用して当学会の活動に魅力を感じる研究者および大学院生の入会を促進したいと考えています。

 任期中、会員の皆様にお役に立てるように会長職に当たります。何卒よろしくお願い申し上げます。

2024年5月