日本経済会計学会教育賞

題目:財務会計のファンダメンタルズ
著者:山本達司
 本書は、日商簿記検定1 級レベルの財務会計のテキストある。第1 章 財務諸表の意義と構造、第2 章 現金預金と金銭債権、第3 章 有価証券、第4 章 収益の認識、第5 章 棚卸資産、第6 章 有形固定資産、第7 章 減損会計、第8 章 リース会計、第9 章 無形固定資産・投資その他の資産・繰延資産、第10 章 引当金、第11 章 退職給付会計、第12 章 社債、第13 章 純資産、第14 章 税効果会計、第15 章 デリバティブの全15 章から構成されている。各章では、それぞれのテーマに関して、「ある経済現象に、なぜその会計処理を選択するのか?」という問題について理論的な解説を行っている。同時に、理論的な理解を確認するための多くの例題を掲載している。
 本書の特筆すべき点は、経済事業に対して単に会計処理を説明するにとどまらず、経済事象そのものを理解し、会計理論的・数学的な根拠に基づいて具体例とともにありうべき会計処理を提示しているところである。このため、今後も会計基準の新設・改訂が継続するとしても、本書を学ぶことで、新たな経済事象を理解し、それに応じた会計処理を導出することが可能となる。本書は一度、学習することで長期にわたり有用性を発揮する内容であり、テキストとして非常に優れている。
 加えて、いくつかの論点に関する「理論的解説」はきわめて秀逸である。基本的事項を体系的に説明するとともに、著者のこれまでの研究成果や教育的経験に基づき、理論的背景を意味づけており、他のテキストにはない新規的な特徴を兼ね備えており、教育的な貢献が大きい。
 ただし、本書の「理論的解説」の厚みは均質的でなく、いくつかの論点については一般的なテキストと同様の平板な解説にとどまっている。また財務会計のファンダメンタルズを習得するという本書の趣旨に照らすと、会計上の論点としての重要性を加味した異なる重点の置き方もあったように考えられる。
 本書にもいくつかの論点があるものの、資格試験のテキストとしてだけでなく、会計に隣接する分野の研究者も理解すべき内容となっている。以上より、日本経済会計学会の教育賞に相応しい。