日本経済会計学会ディスロージャー研究最優秀論文賞
題目:監査スタイルと利益の比較可能性
著者:金鉉玉・藤谷涼佑・金鐘勲
本論文の目的は、日本における監査人の監査スタイルを実証的に解明することにある。利益の比較可能性に監査人が与える影響に着目し、2002 年度から2018 年度にかけての2,673,191 の企業ペアを観測した分析を行っている。分析の結果、監査人、すなわち監査事務所およびパートナーが共通する企業ペアでは、監査人が共通していない企業ペアよりも利益の比較可能性が高いことを明らかにしている。加えて、リードパートナーが共通する企業ペアの利益の比較可能性は高いものの、その他のパートナーが共通する企業ペアではこのような傾向は観察されなかった。
本論文の分析結果は、日本における監査人の監査スタイルの存在と監査チームの監査スタイルにおけるリードパートナーの重要な役割を示している。本論文は学術的な意義を持つと同時に、実務的示唆にも富む。日本初の野心的な取り組みであり、パートナー名の公開や複数のパートナーによる監査といった日本独自の制度的特徴を活用した分析も加えており、監査スタイル研究の進展に大きく寄与する。また、本論文の検証には膨大かつ詳細なデータが必要なこともあり、日本企業を対象としてはこれまで手掛けられてこなかった。本論文の貢献は、日本企業を対象にはじめて本テーマに関し実証分析を行うとともに、頑健な証拠が提示されている点である。さらに、非常に大規模なサンプル、および小さな単位のデータを対象に、複数の角度から慎重に分析を実施し、頑健な証拠を見出している点は高く評価できる。
ただし、海外の先行研究が存在する論点に関する追試にとどまっている点や仮設の新規性や独創性が十分でない点などについて、一層の発展が望まれる。
本論文にもいくつかの論点があるものの、追加検証などロバストネスチェックも十分に実施されており、研究の信頼性も高い。以上より、日本経済会計学会のディスクロージャー研究最優秀論文賞に相応しい。

